新興プロモーターのトリラー社が示した新しいボクシング興行の形

4月17日(日本時間18日)、米アトランタのメルセデス・ベンツ・スタジアムで行われたボクシング興行「トリラー・ファイトクラブ」のメインイベントとして、人気ユーチューバーのジェイク・ポール(米)と元UFCファイターのベン・アスクレン(米)がクルーザー級8回戦を行い、ポールが1ラウンド1分40秒TKOで勝利を収めた。

新興ボクシングプロモーション企業で動画投稿アプリを運営するトリラー社が主催、ラッパーのスヌープ・ドッグが司会を務め、PPV形式で放映された今回の興行。約4時間に渡ったイベントは豪華ミュージシャン(ジャスティン・ビーバー、ザ・ブラック・キーズ、アイス・キューブ)らがステージでパフォーマンスを繰り広げた。しかしボクシングの試合よりも音楽パフォーマンスの時間のほうが長く、あたかも主役はアーティスト達であるかのようであった。

今回の興行の想定する客層はボクシングファンではなく、ボクシングに興味のない若者たちであった。ポールとアスクレンは試合前からソーシャルメディア上で互いに挑発しあうことで若者を誘い込んだ。競技の見やすさではなく演出的に盛り上がるようなカメラワーク然り、酒で酔っ払い過激用語を連発して試合を茶化すようなコメンテーター然り。全てがこれまでの伝統的なボクシング放送とは明らかに違うものであった。ボクシングの新規ファンを獲得するには人気スターの対戦を組むことがこれまでの既定路線であった。

この方法論に真っ向から切り込んで行った今回のイベント。PPVは一部米メディアによると200万視聴を獲得した可能性があるという。

今後の日本のボクシング界に新たなファン層を呼び込むことを考える上で、良きにつけ悪しきにつけ参考になる部分はあるのかもしれない。

  1. この記事へのコメントはありません。